私(神経科学者)目線だとサッカー観戦も神経科学の時間です(22人の選手が回路に見える)
学科のソーシャルイベントを主催する機会がありましたが,ちょうど開催中のFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)の試合時間と重なっていたので,イベント中にプロジェクターで試合を映してみたところ,なかなか好評でした。ところで,試合を観ていて思ったんですが,サッカー,面白過ぎますね。自分自身はそんなにサッカーに詳しいわけではないんですが,こんなに面白く感じる理由って,もしかしたら神経科学者目線でサッカー観戦をしているからかもしれません。すなわち,選手の動き自体が動的なネットワーク構造(Dynamic Network)であり,ボールの動きが次元圧縮された活動ダイナミクスのベクトルに見えるんです。時々刻々と変化する動的なネットワーク構造と,その上を流れる活動ダイナミクスの時間構造を予測する楽しさ,とでも言えばいいのでしょうか。22人の選手は固定された点ではなく,時々刻々と結び付きが変化するDynamic Networkになっているように見えます。そう考えると,かなり面白くて,重要なのはボールそのものではないことが分かります。本当に見ているべきなのは,ボールが渡る前のネットワーク構造の変化です。例えば左SBが5 m上がる。すると左WGが中へ入る。すると相手CBが引き出される。このように,まずネットワーク構造そのものが変化し,その結果としてボールのベクトルが決まる。これは神経回路の挙動そのものではないでしょうか。ボールの軌跡は,低次元力学を反映しています。22人いるにもかかわらず,ボールはほとんど数種類の流れしか取りません。例えば,中央突破,サイドチェンジ,逆サイド展開,カウンター,クロス。実際には何百通りにも見えますが,本質的にはかなり少数の活動モードへ圧縮できる。そして,ゴールへ向かう攻撃状態は一種のアトラクターです。私目線だと,得点へ向かう状態空間そのものが吸引領域のように見えます。ゴールへ近づくにつれて,ネットワークは急激に再構成され,状態遷移が起こる。ある閾値を超えると,一気に攻撃モードへ遷移する。普段は安定状態を保ちながら,ある瞬間だけ別のダイナミクスへ飛ぶ。これは神経科学でいうアトラクターダイナミクスだと言えるかもしれません。もしかすると,脳は「Dynamic Network Prediction」が好きなのではないでしょうか。スポーツ観戦が楽しい理由は勝敗だけ...